不動産オーナーの中には「古いアパートを売りたいのに購入希望者のローンが通らない」「なぜ古いアパートは金融機関の審査が厳しいのか」という悩みを抱えている方も多いでしょう。
古いアパートは耐用年数の超過や旧耐震基準により、購入希望者のローン審査が通りにくく、売却が長期化しやすい傾向にあります。
しかし、ローンが通らない状況でも、オーナーが取れる解決策は存在します。
適切な対策を取れば、好条件での売却も難しくありません。
この記事では、古いアパートのローンが組みにくい理由や売却を成功させる3つの解決策を紹介します。
古いアパートの売却で困っている方は、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
古いアパートのローンが組みにくい3つの理由

古いアパートは、築年数が浅いアパートに比べてローンを組むのが難しい傾向にあります。
ここ
では、古いアパートのローンが組みにくい理由を3つ紹介します。
- 耐用年数が超過しているから
- 旧耐震基準に該当するから
- 設備劣化のリスクがあるから
耐用年数が超過しているから
耐用年数を超えた古いアパートは、住宅ローンを組むのが難しくなります。
耐用年数とは建物が税金の計算上で何年使えるかを定めた年数のことで、木造アパートは22年、鉄骨造は34年、鉄筋コンクリート造は47年と定められています。
参考:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」
帳簿上、耐用年数を過ぎたアパートは建物の価値がゼロです。
例えば、築25年の木造アパートの場合、耐用年数が3年オーバーしているため、金融機関は「この建物にはもう価値がない」と判断します。その結果、返済期間が短くなったりローン審査で否決になったりするのです。
返済期間が短くなると毎月の返済金額が高くなり、月々の負担が増えてしまいます。
結果としてローンを組める層が限られ、売却するのが困難となります。
旧耐震基準に該当するから
旧耐震基準の古いアパートは、地震による危険性を理由にローンが組みにくい傾向にあります。
旧耐震基準とは、震度5強程度の地震に耐えることを前提として1981年5月以前に定められた耐震基準のことです。
一方で、現行の新耐震基準では震度6強〜7でも倒壊しないように定められています。
そのため、1981年5月以前に建てられた物件はほとんどが旧耐震基準となり、金融機関は地震による倒壊や大規模な損傷のリスクを懸念してローン審査が厳しくなるのです。
このように、金融機関によっては旧耐震基準物件への融資が制限されることから、ローンを組むのが難しくなります。
設備劣化のリスクがあるから
設備が劣化した古いアパートは、収益性と安全性の観点から金融機関の審査が厳しくなります。
築年数が古くなると、主に次のリスクが高まります。
- 屋根の防水性能が低下することによる雨漏り
- 給排水管の老朽化による漏水
- 電気設備の老朽化による火災リスク
さらに、上記のリスクだけでなく、古い間取りや設備では現代の入居者ニーズに合わず、空室率が高くなりやすくなります。
例えば、3点ユニットバスや押入れ中心の和室は現代のライフスタイルに合わないため、購入希望者から敬遠されがちです。
設備の劣化により賃料収入が不安定になり、多額の修繕費がかかることから、古いアパートのローンを組むのが難しくなります。
古いアパートでもローンが組めるケース

古いアパートだからといって必ずしもローンが組めないわけではありません。
ここからは、古いアパートでもローンが組めるケースを紹介します。
- 相場よりも利回りが高い
- 土地の評価が高い
- 購入希望者の属性が良い
- 金融機関の方針にマッチしている
相場よりも利回りが高い
相場よりも利回りが高いアパートであれば、築年数が古くてもローンが組める可能性があります。
金融機関のローン審査では、築年数や申込者の属性(年収や社会的信用度)だけでなく、物件の収益性も重視しているためです。
例えば、近隣相場の利回りが8%の地域で、対象となる物件が10%以上の利回りを確保していれば、古いアパートでも収益力が評価されます。
また、長期間にわたり空室率が低いアパートも金融機関から高い評価が得られます。
このように、高い収益性を数字で明確に示すことができれば、金融機関も前向きに検討してくれるでしょう。
土地の評価が高い
土地の評価が高い立地にアパートがあれば、建物が古くても融資を受けられるかもしれません。
金融機関は担保評価で建物と土地を総合的に判断するため、土地の価値が高ければ全体の担保評価も上がります。
担保評価とは、金融機関が「万一返済が滞った場合に、その不動産をいくらで現金化できるか」を評価した金額です。
特に都心部や駅徒歩10分以内の物件は、土地の価値が維持されやすいため、融資を受けやすい傾向にあります。例えば、旧耐震基準の建物だとしても、都心の一等地に位置していればローン審査で優遇されやすくなります。
築年数が古くても、土地を含めた担保評価額が高ければ貸し倒れのリスクが低いと判断されるため、金融機関も積極的に融資を検討してくれるでしょう。
購入希望者の属性が良い
金融機関は物件の評価だけでなく、申込者の返済能力を含めて総合的に判断するため、オーナーの属性が良ければ古いアパートでもローンが組める可能性があります。
ローン審査における属性とは、金融機関が審査を行う際に重視する申込者の経済的背景や信用力のことです。
そのため、年収が高く安定した職業に就いている人や、自己資金を多く用意できる人ほど審査に通りやすくなります。
例えば、勤続年数が長い会社員や公務員、医師などの専門職は属性が良いとみなされやすく、古いアパートでも融資が下りるケースがあります。
金融機関の方針にマッチしている
金融機関の方針とオーナーの状況がマッチしていれば、古いアパートでもローンが組めます。
ローンの審査基準は金融機関によって異なるため、築年数や耐震基準にとらわれず独自の基準で判断する金融機関があります。
具体的には、地方銀行や信用金庫、ノンバンク(融資に特化した金融機関)は、築年数にかかわらず物件の収益力やオーナーの返済能力を総合的に判断する傾向にあり、古いアパートでも柔軟に対応してくれます。
そのため、1つだけでなく複数の金融機関に相談し、オーナーに合った方針の金融機関を見つけることが重要です。
古いアパートのローンが組めない場合に売主が受ける影響

古いアパートの購入希望者がローンを組めない場合、売主はどのような影響を受けるのでしょうか。
詳しく見ていきましょう。
- 不動産投資のチャンスを逃してしまう
- 契約後に白紙解除される
- 広告費が継続的にかかる
不動産投資のチャンスを逃してしまう
購入希望者がローンを組めず、アパートが売れないことで次の不動産投資に必要な資金を確保できません。
その結果、投資のチャンスを逃してしまう恐れがあります。
不動産投資は市場の動きが早く、良い物件にはすぐに購入希望者がつくものです。
築浅で利回りの良い物件や、将来性のあるエリアの物件を見つけても、資金がなければ購入できません。
結果として資産を拡大するペースが遅れ、投資戦略全体に悪影響を与えることになります。
契約後に白紙解除される
購入希望者のローンが通らなければ、売買契約後に白紙解除されるリスクがあります。
一般的に不動産売買契約にはローン特約が設定されており、購入希望者のローン審査が通らなかった場合、契約が白紙解除されます。
つまり、購入希望者と売買契約を締結して引き渡し準備を進めていても、ローン審査で否決されれば全てが振り出しに戻ってしまうのです。
手付金は全額返還され、それまでにかかった労力や時間が無駄になります。
一度白紙解除されると売却期間がさらに長期化し、その間の維持費や固定資産税なども支払い続けなければいけません。
精神的な負担も大きく、売却計画が狂ってしまう恐れもあるでしょう。
広告費が継続的にかかる
購入希望者がローンを組めないと、広告にかける費用が継続的にかかってしまいます。
購入希望者がローン審査で否決されると売却期間が長期化し、広告を出し続ける必要があります。
不動産会社に売却を依頼する場合、一般的な広告には売主の費用負担はありません。
しかし、オーナーが指定した広範囲にわたるチラシやポスティング広告、特別に依頼した動画広告などには費用がかかるため、売却期間が長期化するほど継続的に広告費がかかります。
最終的に売却価格が想定を下回った場合、広告でかかった費用が売主の収支を圧迫する要因となる恐れもあるでしょう。
ローンが通らない場合に売主が取れる解決策3選

古いアパートの購入希望者にローンが通らなくても諦める必要はありません。
ここからは、購入希望者のローンが通らない場合の解決策を3つ紹介します。
- 土地として売却する
- 賃貸経営を継続する
- 不動産買取を行っている不動産会社へ売却する
土地として売却する
アパートとしてローンが通らない場合は、建物を解体して更地にして売る方法を検討してみましょう。
更地であれば新築住宅を検討する方や、新しい収益物件を建てたい投資家など、幅広い層にアピールできます。
特に駅近や人気エリアでは、土地の需要が高く早期売却も期待できます。
また、住宅用地で購入する場合は住宅ローンが利用できるため、幅広く集客できるでしょう。
ただし、アパートに入居者がいてすぐに解体できない場合は、立ち退き交渉や法的手続き、引っ越し費用の負担などが必要です。
立ち退き費用や労力を事前に確認し、不動産会社にも相談のうえ判断しましょう。
賃貸経営を継続する
購入希望者のローンが通らず売却が難しい場合は、売却を一旦見送って家賃収入を得ながら時期を待つのも1つの方法です。賃貸経営を継続することで、以下の効果が期待できます。
- ローンの残高が減り売り出し価格が下がる
- 家賃や条件を見直せば利回りが高める
- リフォームやリノベーションで空室率が改善される
賃貸経営を続ければローンの残債が減るため、適正価格で売却できるタイミングを狙うことができます。
さらに、家賃や敷金・礼金などを見直して入居率を改善すれば、収益が増加し利回りを高めることも可能です。
また、リフォームやリノベーションを行えば空室率の改善も期待できます。
ただし、賃貸経営の継続により設備の老朽化や空室率の上昇などのリスクもあるため、長期的な収支計画を立てて判断することが大切です。
不動産買取を行っている不動産会社へ売却する
更地にすることも賃貸経営を続けることも難しいという場合は、不動産会社への買取を検討してみましょう。
買取とは、不動産会社が直接物件を買い取る売却方法です。
買取を行う不動産会社は自己資金で購入するケースが多いため、ローン審査の心配がありません。
さらに、一般的な売却活動では6ヶ月〜1年程度かかることが多いですが、買取であれば査定から決済まで1ヶ月以内で完了することもあります。
契約後の白紙解除リスクもなく、確実性が高い点も買取のメリットです。
ただし、買取価格は市場価格より低くなることが一般的です。
それでも広告費や長期間の維持費を考えれば、トータルでは損失が少ない場合もあります。
買取を依頼する不動産会社を選ぶ際は、アパートの買取経験が豊富で価格の根拠を明確に説明してくれる会社を選びましょう。
まとめ

古いアパートは耐用年数の超過や旧耐震基準、設備劣化のリスクにより、ローンが組みにくい傾向にあります。
ローンが組めないことにより、オーナーは投資規模拡大のチャンスを逃したり契約を白紙解除されたりする影響を受けることが考えられます。
ローンが通らない場合でも、土地としての売却や不動産会社への買取を行えば、古いアパートを 売却できるかもしれません。
住新センターは25年以上にわたる大家業の経験から、オーナー様の状況に合わせた最適な売 却戦略をご提案いたします。
住新センターでは古いアパートの買取も行っておりますので、古い アパートの売却でお困りの際はお気軽にご相談ください。